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考え、野菜が沢山入ったかす汁や栄養価の高い具入りの温かいおにぎりを避難所に届けることにしました。地元の多くの方々の温かいご協力と力強い援助も得られ、20余の避難所で約2200食を召し上がって頂くことができました。
暫く後に、「手作りの温かい食事を頂きましてどうも有り難うございました。この様な時だからこそ人様の温かい心づくしは、とても励みになります。頑張ります。」「とても言葉では言い尽くせない程の温かい心と物の大きな贈り物を頂き、大変感謝しております。」等の数多くのお礼状が届きました。これらのボランティア活動の輪は、幅広い年齢層で大きく拡がり、それと共に人と人とのつながりもより広く、深く、強くなったようです。この震災と、それに続く様々な活動を通して、人生観や価値観が大きく変わった人が、私も含めて多かったと思います。
被災地の一日も早い復興を切に願い、少しでもお役に立てればと思い、始めたささやかなボランティア活動でした。

 

震災で感じたこと

 

田 中 笑 子
(西宮市)

 

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今回の震災は、過去に例をみない予想を遙かに超える規模の災害であり、西宮市においても数多くの家屋が倒壊するほか、1,220 名もの死者がでました。「ライフライン」初めての言葉。鉄道、道路、水道、電気、ガス、通信が不通になり、文明生活が発達して何不自由なかったのが、初めての体験をしたことです。私共の町会では60軒の家が全壊しましたが幸い死者は1人も出ませんでした。家の片付けも後回しに、仲間と繰り広げていたボランティア活動、まず、地域内の色々な組織が協力しあって小学校の校庭で炊き出しを行い、4か所の避難所におにぎりを配達しました。でも、日数が経過すると「おにぎり」も感謝されなくなり、物に対する感謝、人に対する感謝もできないのかと悲しく思いました。また、水のない不自由さは身にしみました。自衛隊が車で来て、又別の容器にと非常に苦しい思い、一滴の水たりとも無駄にできない大切さを知りました。
10日経過した頃、甲子園まで歩き電車で福島の銭湯に行き、お湯に体を沈めた時、ああ生きていてよかった、と涙が出るほど嬉しく思いました。慣れ過ぎて気付かずにいる水の恩です。
今回の経験で感じたことは通信が途絶したら大きな組織は統一的行動が取りにくいこと、そしてまた、近所の人達の救助活動、悲しみも乗り越えて命の大切さ、人と人との係わり合い、絆の大切さを実感しました。実生活の中でこれから生かしていこうと思います。

 

 

 

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